ネブラスカ訪問

第5回(2022年)

 

文責 岩脇 彰


9月18日(日)

 15時に羽田を出発し、サンフランシスコとデンバーを経由して、19時半にリンカーンに到着しました。時差があるのでわずか4時間半ですが、実際には18時間の旅でした。今回三重から訪問したのは、コロナもあり、奥山聡子さんと岩脇の2人でした。 

 空港には、いつもお世話になっているデボラさん(オマハ在住)が車で迎えに来て下さいました。デボラさんは以前に三重県でALTをされていて、日本語もとても上手で、2008年の第1回訪問からずっとお世話になっています。 

 前日に到着した吉德の青木さんも一緒に来て下さいました。

 この日は奇しくも、川崎文庫の佐藤まどかさんのお誕生日でしたので、ホテルに着いてすぐに、奥山さんが用意して下さった松阪木綿のコサージュと、伊勢千代紙の名前スタンプとメモ、それにケーキ型風船をプレゼントしました。おめでとうございます。お誕生日なのに、ご家族との時間を割いて頂いて申し訳なかったです。

 スーザン館長もほどなく来て下さり、夕食会が始まりました。

佐藤さんのお誕生日をお祝い
佐藤さんのお誕生日をお祝い

 右から佐藤さん(川崎文庫)、スーザン館長、青木さん(吉德)、奥山さん、デボラさん。ネブラスカの懐かしい皆さんがそろって嬉しかったです。この3人の方が毎日交代で私たちをサポートして下さるそうで、とても嬉しいです。

 今回は、いつも宿泊するエンパシーホテルの部屋が取れなかったため、コーンハスカー・マリオットホテルに泊まりました。少し安い反面、朝食がついていないのですが、皆さんが用意して下さるそうです。とてもありがたいです。


9月19日(月)

 スーザン館長の車でモリルホールへ行き、用意して下さったベーグルの朝食を頂きました。

 この日は青木さんが「ミス三重」の修復をして下さいました。

佐藤まどかさん撮影
佐藤まどかさん撮影

 着物と襦袢、そして下着を脱がせて、念入りに修復箇所をチェックされる青木さん。「ミス三重」のお腹を押さえて声を聴かせると、博物館の方や来訪者はびっくり、そして大喜びでした。

佐藤さん、スーザン館長、クリスタさん。
佐藤さん、スーザン館長、クリスタさん。

 チェックの結果、これまでわかっていた箇所に加えて、右足にもひびがあることが判明。すべてのひびを青木さんが胡粉で修復されました。その速さと精巧さに、危機管理担当のケイトリンさんは感動されていました。そして「傷さえ直せば、日本に行くのを止める理由はない」と言って下さ

美味しかったベーグルの朝食
美味しかったベーグルの朝食
「正座もできるんですよ」と青木さん。
「正座もできるんですよ」と青木さん。

 奥山さんがお土産に持ってきて下さった浴衣をスーザン館長にプレゼント。着付けもして下さいました。川崎文庫の佐藤さんとクリスタさんにはミス三重Tシャツをプレゼントしました。

 これでミス三重Tシャツの在庫がなくなりました。27年には新作を作りたいですね。

青木さんとケイトリンさん
青木さんとケイトリンさん

いました。17年の里帰り後に「ミス三重はかなり傷んでいるから、今後貸出しは難しいかも知れない」と博物館から打診があったので、この言葉はとても嬉しかったです。

 さらに「博物館の危機管理計画では、『ミス三重』を一番に守ることになっている」とケイトリンさん。「ミス三重」が大切にされていることがわかりました。

 学生センターで昼食を頂いた後、午後は佐藤さんがキャンパスを案内して下さいました。川崎文庫に集う方と話したり、フットボールスタジアムを見たりしましたが、初めて教わったのは「二世プラザ」。

 説明板によると、第二次世界大戦の時に日系人は強制収容所に入れられましたが、ネブラスカ大学とリンカーン市は日系人学生を受け入れました。そのことに感謝して1999年に日系二世同窓会がこの庭園を寄贈されたそうです。 

副学長ご夫妻と夕食
副学長ご夫妻と夕食
THE NISEI PLASA
THE NISEI PLASA

 川崎文庫では学生さんとも話ができて良かったです。学生さんによると、アメリカではサッカーは女の子のスポーツだそうで驚きました。

 夜は、ネブラスカ大学の副学長ご夫妻が夕食に招待して下さいました。ダウンタウンにある元駅舎内のレストランで美味しいお料理を頂きました。副学長は神戸市で働かれていたそうで、日本のことにお詳しかったです。奥様もとても明るい方で、楽しい時間を過ごすことができました。

 ご招待ありがとうございました。


9月20日(火)

 スーザン館長の車で、キャンパスの北に新しくできたイノベーションキャンパスに行き、そこのお店で朝食を頂きました。キッシュやナッツ入りヨーグルトが美味しかったです。

朝食を頂いたお店。
朝食を頂いたお店。

 モリルホールで「ミス三重」の修復のチェックをしてから、着付け直しをしました。

 着付けの途中で、着物の左脇に糸のほつれがあったので、青木さんに「やってみる?」と言われた奥山さんが縫い直して下さいました。

中央右の方に糸のほつれが見えます。
中央右の方に糸のほつれが見えます。

 きれいになった「ミス三重」と博物館の皆さんで記念撮影をした後、「ミス三重」は展示会場へ。前回の里帰りと100周年のちょうど中間に、修復と着付け直しができて良かったです。

95才をお祝いする展示会場
95才をお祝いする展示会場

 新しい考え方や技術を取り入れて社会や生活の革新を考えるイノベーションキャンパスですが、レストランは木を基調に伝統的なスタイルを大切にしていて、アメリカ文化の確かさと豊かさを感じました。大学の設備投資も、日本とは比べ物にならないぐらい大規模で計画的です。

修復の仕上がりを確認する青木さんとケイトリンさん
修復の仕上がりを確認する青木さんとケイトリンさん

「布が古くて、こんなに柔らかいとは思わなかったから、針を入れた時に緊張した」と奥山さん。出来上がりを見た青木さんが「ベリーナイス、グッジョブ!」と言って下さいました。

左からスーザン館長、岩脇、ケイトリンさん、ジョエルさん、青木さん、奥山さん。
左からスーザン館長、岩脇、ケイトリンさん、ジョエルさん、青木さん、奥山さん。

 展示に新しく加わった「ミス三重」とのバディベンチにも座ることができました。次の展示と着付け直しは5年先。それまで元気にいてほしいですね。


 昼食は懐かしいランザ。パンの中にひき肉や玉ねぎが入っています。ランザはチェコスロバキアの料理だとスーザン館長に教わりました。そしてキルト博物館へ。館長さんが、展示だけでなく、作業室や収蔵庫も見せて下さいました。

キルト博物館の膨大な収蔵庫を案内して下さる館長。
キルト博物館の膨大な収蔵庫を案内して下さる館長。

 手紙に書かれていることを、グーグル翻訳を使ってケイトリンさんにお伝えすると、とても感動されていました。ネブラスカで保管されている、1927年に三重の143の学校・園から贈られた217通の手紙を英訳することが大切だと感じました。

 今回の訪問で、グーグル翻訳がとても重宝だと知ることができました。

左からジョエルさん、スーザン館長、奥山さん、佐藤さん、デボラさん、青木さん。
左からジョエルさん、スーザン館長、奥山さん、佐藤さん、デボラさん、青木さん。
キルトの作業室で。
キルトの作業室で。

 佐藤さんの車で大学に戻り、ケイトリンさんが三重からの95年前の手紙や収蔵資料を案内して下さいました。ケイトリンさんは3年前から博物館で勤務されているそうです。

三重からの手紙や写真を見せてもらう。(写真は佐藤さん提供)
三重からの手紙や写真を見せてもらう。(写真は佐藤さん提供)

 夜はスーザン館長のご招待で、懐かしいステーキハウス「ミスティ」で美味しいお料理を頂きました。お薦めメニューに「WAGYU(和牛)」があったのも面白かったです。


9月21日(水)

 デボラさんの車でリンカーンを出発してセントジョセフの「ミス兵庫(元・三重子)」に会いに行きました。片道142マイル(228km)、約2時間半のドライブです。車中でデボラさんが早朝から作って下さったマカロンやヨーグルトなどを朝食に頂きました。

「ミス兵庫」が保管されている建物
「ミス兵庫」が保管されている建物

「ミス兵庫」は2階の展示室で、ライオンやトラなどと一緒に展示されていました。

 セントジョセフ博物館で大切にされている「ミス兵庫」に5年前も会いに来ましたが、その時と建物が変わっていました。子どもたちが見学しやすくなるように移動したそうです。子どもたちがここで人形について学習し、Doll Tea Timeという活動もあるそうで、嬉しくなりました。

  スーザン館長が詳細な打ち合わせをして下さったので、修復準備も万全でした。さっそく青木さんがキズを胡粉で修復され、着付けも直されました。奥山さんは着物の金駒を直されました。


「今年の1月からセントジョセフ博物館に来ましたが、今日が一番素晴らしい日です」とサーラさん。驚いたのは、ネブラスカのケイトリンさんとサーラさんは同じ大学で学んだ友だちだそうで、新しい交流が広がりそうです。

 青木さんが帯をしめる時に、色の鮮やかな所が正面に来るように工夫されたので、修繕前より見違えるように鮮やかになり「ミス兵庫」も喜んでいるように感じました。

 とても充実した半日でした。

岩脇、サーラさん、青木さん、デボラさん、奥山さん。
岩脇、サーラさん、青木さん、デボラさん、奥山さん。

修復前
修復前
修復後
修復後

りんご農家のお店で(デボラさん撮影)
りんご農家のお店で(デボラさん撮影)

 それからセントジョセフのダウンタウンを散策して、帰りにネブラスカシティにある、りんご農家のお店や素敵なレストランに寄りました。どちらもデボラさんお薦めのお店で、とても良かったです。

 デボラさんはリンカーンから車で約1時間離れたオマハから私たちのために来て下さいました。早朝から朝食を作って下さってから、往復600キロ強の運転をされ、昼食も夕食も招待して下さったデボラさん。本当にありがとうございました。

 

 

9月22日(木)

 スーザン館長の車でホテルを出発し、モリルホールで朝食を頂いてからダウンタウンでショッピング。その後、リンカーン市郊外のプレーリーにあるスーザン邸で昼食を頂きました。すばらしいサプライズでした。元気な3匹のワンちゃんも出迎えてくれました。

この弓で鹿やガチョウを撃つそうです。
この弓で鹿やガチョウを撃つそうです。

 昼食にはディアのソーセージやグースのお料理をクラッカーに載せて頂きました。とても美味しかったです。

ずっと続くトウモロコシ畑
ずっと続くトウモロコシ畑

 午後は、川崎文庫30周年のセレモニーに参加しました。川崎文庫は川崎重工業のご支援で、日本語や日本文化を伝える場で、日本の図書もたくさんあります。

 活動の紹介では「ミス三重」や私たちの会のことも伝えて下さいました。

青木さんと奥山さん
青木さんと奥山さん
道具が揃わない中、工夫して進めて下さった奥山さん
道具が揃わない中、工夫して進めて下さった奥山さん

 セレモニーの後、川崎文庫でスーザン館長とジョエルさん、デボラさん、佐藤さんと最後の夕食会。いろいろなアメリカ風お寿司を頂きました。

 ネブラスカの皆さんが私たちの訪問を毎日支えて下さり、お食事もすべて招待して下さいまし

 スーザン邸は敷地が9haもあり、敷地の中でディア(鹿)やグース(ガチョウ)を撃つそうです。ワンちゃんたちも狩りの練習を楽しそうにしていました。

円いのがディアのソーセージ、上がグース。
円いのがディアのソーセージ、上がグース。

 スーザン邸の近くから広大なプレーリーが広がりトウモロコシ畑がずっと続いています。

 ベッドルームだけでもいくつもあるゆったりとした邸宅、広大な敷地、そしてプレーリーの景色。アメリカの広さや豊かさを感じることができ、とても良い思い出になりました。 

 第二部では青木さんが紙人形作り、奥山さんが抹茶体験のブースを担当されて好評でした。

短期訪問されていた神戸大学の学生さんも参加されました。
短期訪問されていた神戸大学の学生さんも参加されました。
川崎文庫でお寿司パーティ
川崎文庫でお寿司パーティ

た。とてもありがたかったし嬉しかったです。青木さんも同行して下さり「ミス三重」「ミス兵庫」の修復や着付けもできました。本当に充実した訪問になりました。

 人形を通してこれだけの人がつながることができ、まさに人形交流は人間交流だと実感できました。また「ミス三重」が展示される時にお邪魔したいです。皆さまありがとうございました。